経営強化法との関係は?BCPとの違いと位置づけ

事業継続力強化計画(ジギョケイ)の基本的な位置づけ

自然災害や感染症の拡大など、企業を取り巻く環境変化が激しくなる中で、中小企業が「いかにして事業を止めないか」は経営の最重要課題です。
その対策として国が制度化したのが 「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」 です。

この計画は、災害等が発生した際に被害を軽減し、事業活動を継続できるようにするための事前対策の指針です。
中小企業が自社の災害リスクを把握し、防災・減災の第一歩として取り組む内容を明確にする役割を持っています。


経営強化法(中小企業等経営強化法)との直接的な関係

制度の法的根拠

事業継続力強化計画は、「中小企業等経営強化法」に基づく制度です。
この法律は、中小企業の経営基盤の強化を目的としており、その中に「事業継続力強化」に関する規定が設けられています。
つまり、ジギョケイは経営強化法の一部として位置づけられており、国が法的に裏付けを持って認定を行う仕組みです。

認定による優遇措置

経営強化法に基づき認定を受けた中小企業には、以下のような優遇措置が適用されます。

  • 税制措置:中小企業防災・減災投資促進税制の適用(特別償却16%など)
  • 金融支援:日本政策金融公庫の低利融資(BCP資金)や信用保証協会による保証枠拡大
  • 補助金加点:ものづくり補助金、事業承継・M&A補助金、小規模事業者持続化補助金での加点評価

これらの措置は「中小企業等経営強化法」第56条または第58条に基づく認定を受けた企業が対象となります。


BCP(事業継続計画)との違いと関係性

BCP(事業継続計画)の定義と指針

BCP(Business Continuity Plan)は、自然災害や感染症などの非常時においても、企業が重要業務を継続するための具体的な対応方針をまとめた計画です。
国は「中小企業BCP策定運用指針」や「事業継続ガイドライン」を策定し、BCPの普及を推進しています。

これらの指針では、企業の現状分析から復旧体制構築までを体系的に示し、経営層の関与・従業員教育・訓練などの継続的改善が求められています。

ジギョケイとBCPの位置づけ

ジギョケイは、BCPの入口となる制度です。
中小企業がすぐに本格的なBCPを策定するのは難しい場合も多いため、国は**「簡易型・第一段階のBCP」**としてジギョケイを設けています。

つまり、

  • ジギョケイ=はじめの一歩(基礎計画)
  • BCP=高度な継続計画(実践型)
    という位置づけです。

国も、ジギョケイの策定支援や審査において、「中小企業BCP策定運用指針」や「事業継続ガイドライン」を参考とすることを明示しています。

既存BCPとの連携

すでにBCPやISO 22301(事業継続マネジメントシステム:BCMS)の認証を取得している企業は、その内容を踏まえてジギョケイを策定することが可能です。
この場合、すでに実効性のある体制が整っているため、計画の一部記載を省略できるケースもあります。


ジギョケイの活動範囲:何をどこまで行うのか

計画期間

事業継続力強化計画の期間は3年以内と定められています。
この期間内に、防災・減災設備の導入、訓練、資金計画などの実施目標を立てます。

想定すべきリスクの範囲

対象とするリスクは自然災害に限らず、以下のように広範囲です。

  • 地震・風水害・噴火などの自然災害
  • 感染症やサイバー攻撃など、社会的・技術的リスク

ハザードマップや行政データを活用し、自社のリスクを明確化することが求められます。

計画内容と対策領域

ジギョケイは、以下の4つの経営資源について事前対策を立てる構成となっています。

  1. ヒト(人員体制):多能工化、緊急時の人員確保、安否確認手順
  2. モノ(設備):自家発電装置、止水板、耐震設備の導入
  3. カネ(資金):資金繰り計画、融資枠確認、保険・共済加入
  4. 情報(保護):データのバックアップ、クラウド化、緊急連絡体制の整備

実効性の確保

ジギョケイは「策定して終わり」ではありません。
経営層が主導して防災訓練や教育を年1回以上実施し、環境変化や訓練結果を踏まえて計画を定期的に見直すことが求められます。
この継続的改善こそが、制度の本質です。


まとめ

事業継続力強化計画(ジギョケイ)は、経営強化法に基づく法定制度であり、BCP(事業継続計画)への第一歩として国が推奨する取り組みです。
中小企業にとっては、災害時のリスク回避だけでなく、国の認定を通じた信頼性・補助金加点・税制優遇といった多面的なメリットがあります。
「備え」を経営戦略として位置づける企業こそが、これからの時代に持続的に成長できる企業と言えるでしょう。

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