対象業務とは
日本版DBS(こども性暴力防止法)において、事業者が安全確保措置(犯罪事実確認を含む)を講じる対象となる業務を対象業務といいます。この対象業務を行う従事者を、学校設置者等では教員等(法第2条第4項)、認定事業者等では教育保育等従事者(法第2条第6項)と定義しています。
事業者は、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する立場にあり、従事者が児童等と特別な社会的接触の関係を持つことから、性暴力の発生に特別な注意を払うことが求められています。
1. 対象業務を特定する「三要件」
対象業務の範囲は、業務の実態が支配性・継続性・閉鎖性の三要件をすべて満たすか否かによって判断されます。
| 要件 | 具体的解釈 | 根拠 |
|---|---|---|
| 支配性 | 業務上、指導やコミュニケーション等を通じて優越的立場に立つ機会が想定されるか、または成人とこどもの関係上、接触が継続的にあれば原則として支配性があると判断される。 | 法第2条関係 |
| 継続性 | 日常的、定期的、その他継続性をもって(不定期であっても反復継続が見込まれる場合など)児童等と接する機会が想定される業務であること。年に1回のイベント講師など、一時的な接触は継続性がないと判断され得ます。 | 法第2条関係 |
| 閉鎖性 | 他の職員や保護者等が同席せず、第三者の目に触れない状況で児童等と接する機会が生じ得る場合(従事者と児童等が一対一になる場合等)に閉鎖性があると判断される。 | 法第2条関係 |
2. 職種の一部が対象となる場合の判断例
法律に明記されている教諭や保育士等とは異なり、職種全体が対象とならない職員(いわゆる「一部対象職種」)については、各事業者が実態に応じて三要件に基づき判断・特定することが求められます。
| 職種 | 対象となる業務(三要件をすべて満たす) | 対象外となる業務(三要件を満たさない) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 事務職員 | 保護者との面談時などに別室で児童等の面倒を見るなど、例外的な場面で第三者の同席がない接触が業務として想定される者。 | 業務が電話対応、書類整理などに限定され、児童等との接触がほとんど想定されない者。 | 法第2条第4項関係 |
| バス運転手等 | 日々の送迎業務において、他の職員が同席しないバスで、児童等に会話等を通じて接触することが想定される者(特に最後に降ろす児童等とは一対一になる)。 | 他の職員の同乗が前提となっており、第三者の同席がない状況がほとんど想定されない者。 | 法第2条第6項関係 |
| ボランティア/スポットワーク | 居場所づくりの事業で学習支援を行うスタッフとして一対一で指導・交流等を行い、かつ定期的な参加が見込まれる場合。 | 学校のPTAが開催する年1回のイベント参加や、夏休みの1日だけの指導など、継続性がない者。 | 法第2条第6項関係 |
| 医師/嘱託医 | 施設内の診察室等で、他の職員が同席しない状況が生じうる環境下で、年に複数回、個別診察や健康相談等の業務を行う者。 | 年一回の健康診断のみで、児童等との接触が一時的かつ常に他の職員による同席が想定される者。 | 法第2条第4項関係 |
なお、有期労働契約等により従事する期間が短い者(いわゆる「スポットワーク」)やボランティアスタッフについても、業務内容が三要件を満たし、教員等又は教育保育等従事者に該当する者である限り、従事期間による例外は設けられません。