短期従事者も例外ではない
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、児童と接するすべての従事者を対象としています。
勤務期間が1日や数日であっても、児童と接触する職務であれば犯罪事実確認の対象に含まれます。
一方で、短期雇用やボランティアのような「スポットワーク(短期従事者)」には、
記録の廃棄や再取得など、法令遵守と実務負担の両立という難題が生じます。
このページでは、短期従事者への適用範囲、記録管理義務、特例運用までを整理します。
スポットワークの制度上の位置づけと確認義務
こども性暴力防止法は、従事期間の長短による例外を認めていません。
そのため、次のような立場も「教員等」または「教育保育等従事者」に該当する場合には、
犯罪事実確認の対象となります。
- 1日限定のイベント運営スタッフ
- 保育補助・キャンプスタッフ・学習支援ボランティア
- 学校や放課後クラブの短期アルバイト
また、対象業務に該当するかどうかは、
業務の支配性・継続性・閉鎖性という3つの要件に基づいて判断されます。
特に「継続性」については、不定期であっても反復して従事する見込みがあれば該当するとされています。
短期契約が抱える「廃棄・再取得義務」の課題
法第38条第2項では、事業者に対し、従事者が離職した日から30日以内の記録廃棄・消去義務を課しています。
しかし、スポットワーク従事者のように契約が短期間で繰り返される場合、
- 離職のたびに犯罪事実確認記録を廃棄し、
- 再雇用時に戸籍等を再提出・再確認する
というサイクルが発生します。
これにより、事業者側の事務負担と従事者の個人情報リスクが増大するという課題が指摘されています。
「離職に当たらない」特例的な運用と意向確認書面
この課題を軽減するため、制度上は一定の要件を満たす場合に「離職に当たらない」という特例運用が認められています。
適用条件の例:
- 短期契約またはボランティア契約を反復継続的に締結している
- 近い将来の再従事が予定されていることを、
客観性を有する書面(意向確認書面)で明確に取り交わしている - 実態として継続関係が認められる
この「意向確認書面」には、再従事予定の時期を具体的に明記し、
その有効期間は6か月を超えない範囲で設定することが適切とされています。
この運用により、形式的な離職期間を挟んでも記録を保持し続けることが可能となり、
不要な再手続きを防ぐことができます。
記録保持時に求められる厳格な情報管理措置
「離職に当たらない」として犯罪事実確認記録等を保持する場合、
事業者は引き続き、機微性の高い情報を適法かつ安全に管理する義務を負います。
法第12条に基づく主な制約
- 目的外利用禁止:犯罪事実確認や防止措置以外の利用は禁止
- 第三者提供の禁止:本人同意または法令に基づく場合を除き提供不可
さらに、情報管理措置には次の3領域の対策が求められます。
- 組織的管理:管理責任者の設置、内部監査体制の構築
- 技術的管理:アクセス権制御、暗号化、ログ管理
- 物理的管理:施錠保管、紙記録の廃棄手順(クロスカット方式など)
これらを怠ると、目的外利用や情報漏えいといった重大なコンプライアンス違反につながるため、
保持期間中も継続的な点検・教育が不可欠です。
まとめ:短期従事者を含む現場対応の指針
- スポットワーク従事者も日本版DBSの犯罪事実確認対象
- 離職後30日以内の記録廃棄義務(法第38条第2項)
- 再従事予定者には「離職に当たらない」特例運用が可能
- 意向確認書面の活用と6か月以内の期間設定が実務上の鍵
- 記録保持中は、目的外利用禁止と厳格な情報管理措置を徹底
短期従事者が多い教育・保育現場では、
法令遵守・個人情報保護・実務効率のバランスを取る体制づくりが重要です。
関連タグ・関連記事リンク
- 意向確認書面の作成と運用方法
- 犯罪事実確認記録の廃棄義務と期限管理
- 情報管理措置の全体像と具体的手順