法施行を前に求められる「対象者の棚卸し」
日本版DBS(こども性暴力防止法)は、児童等と接する職員について性犯罪歴の有無を確認し、再発防止を図ることを目的とした制度です。
制度の趣旨は明確ですが、実務において「誰が対象になるのか」「ボランティアや短期スタッフは?」といった判断は容易ではありません。
ここでは、現時点のガイドライン検討状況を踏まえ、対象となる機関・職種・雇用形態を体系的に整理します。
制度の目的と対象範囲
この制度の目的は、学校設置者や認定事業者が、従事者による児童対象性暴力を防止する責務を果たすことにあります。
そのため、対象業務に従事する者について、性犯罪歴の確認(犯罪事実確認書の提出)が求められます。
1. 義務対象(学校設置者等)の範囲
**「学校設置者等」**とは、法令に基づき認可を受け、安全確保措置が義務付けられる機関を指します。
| 分類 | 対象機関の例 | 対象職種の例 |
|---|---|---|
| 学校教育法関係 | 幼稚園、小・中・高、特別支援学校、高専、専修学校(高等課程) | 校長、教諭、講師、教授、准教授、寄宿舎指導員等 |
| 認定こども園関係 | 幼保連携型を含む全類型 | 園長、保育教諭、養護教諭、栄養教諭等 |
| 児童福祉法関係 | 保育所、児童養護施設、放課後等デイサービス等 | 所長、児童指導員、保育士、看護師、管理者等 |
実態に応じて一部が対象となる職種
調理員や送迎バス運転手、事務職員などは、以下の三要件をすべて満たす場合に対象となります。
- 支配性:業務上の権限や指導性がある
- 継続性:反復・継続して児童と接する
- 閉鎖性:一対一等で密室性がある
例:送迎バス運転手
- 対象となる場合:同乗職員がいない、一対一接触の可能性がある
- 対象外となる場合:常に他職員が同乗する運用が徹底されている
2. 認定対象(民間教育保育等事業者)の範囲
学習塾やスポーツクラブなどを運営する事業者は、内閣総理大臣の認定を受けた場合、安全確保措置の実施義務が発生します。
| 分類 | 対象事業の例 | 対象職種の例 |
|---|---|---|
| 教育関係 | 学習塾、スポーツクラブ、専修学校(一般課程) | 講師、指導員、受付、清掃員(条件による) |
| 福祉関係 | 一時預かり、病児保育、障害児通所支援等 | 保育士、管理者、支援員等 |
3. 実習生・短期スタッフ・ボランティアの取扱い
雇用形態・従事期間にかかわらず、業務内容が三要件を満たす者は原則対象です。
- 短期従事者・ボランティア
- 1日・数日でも一対一接触が想定される場合は対象
- 年1回など一時的なイベント指導者は継続性を欠き対象外
- 実習生
- 教員の監督下にある場合は対象外
- 長期実習や一対一接触を予定する場合は確認が必要
4. 一体的運営の場合の整理
義務対象事業(例:認可保育所)が付随的に民間事業(例:一時預かり)を運営している場合、同一運営主体かつ安全確保措置が共通している場合は、一体として扱われます。
このとき、別途認定を受けずに従事者を「教員等」として整理することが可能です。
まとめ:今から始める「対象者の棚卸し」
令和8年12月25日の施行を前に、事業者が今取り組むべき最優先課題は「対象者の棚卸し」です。
特に以下の点を早急に明確化しておく必要があります。
- 従事者ごとの業務内容を三要件に照らして分類
- ボランティア・派遣・アルバイトも含めた網羅的把握
- 情報管理規程・研修実施計画の整備
制度対応は単なる確認手続ではなく、組織としての信頼を高める安全文化づくりの第一歩です。
行政書士として、体制整備・文書作成・運用規程策定を支援いたします。
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