「こども性暴力防止法」では、教育・保育等の現場で児童を守るため、職員の犯罪歴確認や安全確保措置を義務づけています。その中で注目されるのが、**「民間教育事業」および「放課後児童健全育成事業に類する事業」**の認定範囲です。ここでは、「中間とりまとめ」に基づき、事業者や自治体担当者が特に注意すべき2つの論点について整理します。
公立・公営施設が民間教育事業の対象となる場合
民間教育事業の基本的な考え方
「民間教育事業」は、法律上の明確な定義が存在しない学習塾やスポーツクラブなどを想定した類型ですが、その運営主体が民間か公立かにかかわらず、一定の基準を満たす場合には対象となります。
すなわち、公立・公営の事業であっても、実質的に民間教育事業の形態をとる場合には、認定の対象に含まれる可能性があります。
認定対象となるための5つの要件
民間教育事業として認定を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 児童等に対して技芸又は知識の教授を行う事業であること
例:学習、スポーツ、芸術、音楽などの指導。 - 習得のための標準的な修業期間が6か月以上であること
短期講座ではなく、継続的な学習環境が求められます。 - 対面による指導を行うものであること
オンラインのみの講座は原則対象外です。 - 事業者が用意する場所(事業所等)で指導を行うこと
自宅やカフェなどではなく、専用または指定の施設が必要です。 - 教授を行う者が3人以上であること(政令で定め)
一定規模以上の組織的運営が前提とされています。
公立・公営施設への適用例
これらの要件をすべて満たす場合、公立図書館などの公的機関が実施する活動であっても民間教育事業の対象となり得ます。
たとえば、公立図書館が定期的かつ継続的に実施する児童向け読み聞かせ会などは、実質的に教育的機能を持つため、対象事業に該当する可能性があります。
つまり、「公立だから対象外」という一律の扱いではなく、実態に基づく判断が求められる点が重要です。
放課後児童健全育成事業に類する事業の範囲
類する事業の位置づけ
「放課後児童健全育成事業に類する事業」とは、放課後児童クラブ(いわゆる学童保育)に加えて、放課後子供教室や地域未来塾など、学校・地域が一体となって行う活動を指します。
これらの事業は、放課後児童健全育成事業と同様に子どもの居場所や学びの機会を提供するものとして、こども性暴力防止法の認定対象に含まれます。
認定対象となる施設の範囲
法第2条第5項第9号では、「内閣府令で定める施設」において行われる事業が対象とされています。中間とりまとめでは、以下の施設がその範囲として想定されています。
- 学校施設
例:小学校、中学校などの校舎・体育館を利用した活動。 - 社会教育施設
例:公民館、青少年センター、図書館など。 - 児童厚生施設
例:児童館や子どもセンター。 - 地方公共団体が設置する公共施設
例:文化ホール、コミュニティセンター、公園、廃校を活用した施設など。 - 上記に類するその他の施設
例:私立大学のキャンパス、寺院、地域の民家などを活用した活動。
児童館における対象者の明確化
児童館は、こども性暴力防止法上の義務対象施設とされています。
そのため、以下のような事業に従事する者も、児童館における**「教員等」**として犯罪事実確認の対象となります。
- 児童館の設置者が、児童館において行う**放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)**に従事する者。
- 児童館の設置者が、児童館において行う児童育成支援拠点事業に従事する者。
これらの従事者は、児童館の認定対象事業に関わる職員として位置づけられ、犯罪歴確認などの安全確保措置が義務づけられます。
したがって、児童館の運営者は、自施設内で実施する事業の範囲と従事者の対象区分を明確にし、適切な体制整備を行う必要があります。
まとめ
こども性暴力防止法における「民間教育事業」や「放課後児童健全育成事業に類する事業」は、運営主体が公立・民間のいずれであるかよりも、事業の実態と継続性、教育的機能の有無によって判断されます。
とくに児童館のような公共施設では、行われる事業の種類に応じて、従事者の犯罪事実確認や安全確保措置が義務づけられます。
今後、事業者や自治体は、法の趣旨を踏まえ、職員・ボランティアを含む関係者の管理体制を一層明確にしていくことが求められます。
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