「こども性暴力防止法」(以下「法」という)においては、犯罪事実確認記録等(以下「記録等」)の取扱いに関して、極めて厳格な管理が求められています。これは、記録等が高い機微性を持つ個人情報であるため、一般の個人情報保護法の規律に加えて、更に厳しい水準の規制が課されているからです。
本記事では、法第8章に定められた「情報管理措置」について、その全体像と主要な論点を整理します。
1. 情報管理措置の法的義務(法第11条・第14条)
犯罪事実確認実施者(学校設置者や認定事業者等)は、記録等を適正に管理する義務を負います。これを具体化するため、法第11条により、以下の管理措置を講じることが義務付けられています。
- 基本的事項
- 取扱者は必要最小限に限定
- 記録・保存は極力避ける
- やむを得ず保存する場合はリスクに応じた管理措置を実施
- 機器・ネットワーク環境に応じた適正管理
- 組織の長が自ら点検・改善を行う
- 組織的措置:情報管理規程の策定、体制整備、漏えい等への対応体制構築
- 人的措置:従業者への研修・訓練
- 物理的措置:取扱区域の管理、盗難防止、媒体の廃棄・消去
- 技術的措置:アクセス制御、認証、不正アクセス防止
さらに、事業者規模に応じて「標準的措置」と「最低限措置」の二段階が設けられています。
2. システムとの連動
記録等の管理は、法に基づく関連システムを通じて行うことが基本です。これにより、安全性の確保と事業者の負担軽減が両立します。
- 交付申請:GビズID・多要素認証を必須化
- 交付の受領:氏名等を記載せず識別番号のみ表示
- 保存・利用:システム内で閲覧可能、転記やコピーは原則禁止
- 利用制限:権限設定により閲覧者を制限
- 自動消去:確認日から5年後の年度末+30日で自動消去
- 帳簿作成:システム上で受領日等を自動記録
3. 目的外利用・第三者提供の禁止(法第12条)
記録等は、犯罪事実確認および防止措置の実施目的以外では利用不可です。違反すれば罰則の対象となります。
- 利用が認められる例
- 同一事業者内で必要最低限の共有
- 本人面談により防止措置の検討に必要な追加情報を取得
- 禁止される例
- 保護者への個別回答
- 派遣元や請負事業主への情報提供
4. 漏えい等重大事態の報告(法第13条)
記録等の漏えいなど、権利利益を害する重大事態が発生した場合は、直ちにこども家庭庁へ報告が必要です。
- 速報:知った時から3〜5日以内
- 確報:30日以内(不正目的の場合は60日以内)
- 特に重大な事案(特定性犯罪事実の漏えい、100人以上の漏えいなど)は、できる限り迅速に報告
5. 廃棄・消去の義務(法第38条)
記録等は、一定の期限を過ぎれば必ず廃棄・消去しなければなりません。
- 確認日から5年後の年度末+30日
- 従事者の離職から30日
- 対象事業者でなくなった日から30日
廃棄は、紙媒体であれば焼却・溶解・シュレッダー、電子データであれば復元不可能な形にして消去することが求められます。
まとめ
日本版DBSにおける情報管理措置は、個人情報保護法の水準を超え、「漏らさない・残さない・共有しすぎない」という厳格な原則が貫かれています。学校や事業者にとっては大きな負担となりますが、システム活用を軸に子どもたちの安全を最優先にした枠組みが整えられることを期待したいと思います。
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