再婚家庭の相続対策と注意点

相続人の構成を正しく理解する

再婚して新しい家庭を築く方も多い現代、ご家族が元気なうちは良いのですが、一旦相続が開始することでトラブルに発展するケースも往々にしてあります。その一番の原因は、「誰が相続人になるのか」を正しく理解していないことにあります。今回は、再婚家庭の50代女性を一例に備えるべき相続対策についてお伝えします。

相続の基本は「血のつながり」です。しかし、再婚家庭では、血縁・養子縁組・婚姻の有無などが入り混じり、相続人の構成が非常に複雑になり、結果、誤解からトラブルが生じやすい状況です。以下に基本的なポイントを記しました。

  • 実子は、親の離婚や再婚に関係なく法定相続人です
  • 前の配偶者との子も、現配偶者との子も、いずれも相続権があります
  • 再婚相手の連れ子は、養子縁組をしなければ相続権がありません

具体例

  • 前の夫との子(Aさん):相続権あり(実子)
  • 現在の夫との子(Bさん):相続権あり(実子)
  • 夫の連れ子(Cさん/養子縁組なし):相続権なし

この場合、たとえAさんと疎遠でも相続権が発生し、Cさんをどれだけ可愛がっていても養子縁組をしていなければ相続権はありません

子の立場相続権の有無備考
Aさん(前の夫の子)実子なので相続人
Bさん(現在の夫の子)実子なので相続人
Cさん(夫の連れ子)×養子縁組していなければ相続人にならない

法定相続分

相続人の構成配偶者の相続分子どもたちの相続分
配偶者と子1/2子ども全員で1/2を等分
配偶者と親2/3親が1/3(両親で折半)
配偶者と兄弟姉妹3/4兄弟姉妹が1/4(等分)

※異母・異父であっても「実子」であれば平等です

婚姻関係にない相手との間に生まれた子でも、父または母に「認知」されていれば、相続人となります(以前は相続分に差がありましたが、現在は平等です)。

再婚家庭でよくあるトラブル

  • 子ども同士で不公平感が生まれ、遺産分割協議がまとまらない
  • 前の配偶者との子が遺留分を請求する
  • 現在の配偶者と前の配偶者との子の間に信頼関係がなく争いに発展

長年の生活実感と、「血のつながり」が基本になっている法律上の相続権にギャップがあるため、元気なうちに「誰が相続人になるか」を確認し、財産を特定の人に残したいという思いがあれば、遺言書を作成することをお勧めします。

自分と血縁関係にない連れ子に財産を残したいときの方法としても遺言書作成が有効です。 養子縁組という方法もありますが、トータルで判断することが肝要です。 また、配偶者と「それぞれの血のつながりのある子供たちに財産は残す」と取り決めをしていたとしても、相続は突然発生します。 そういった取り決めをする場合にも当人同士のみの約束ではなく、きちんとした「遺言書」というかたちに残しておくことで、無用なトラブルを防ぐことにもつながります。