こども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS)では、教育、保育、福祉など児童と接する事業者に対して、従事者の「特定性犯罪に関する犯罪事実」の有無を確認する義務が課されています。
この確認には「業務開始前までに実施する」という期限がありますが、実務上より重要なのは「いつから確認手続きを開始できるのか」というタイミング判断です。
特に、新規採用や異動に伴い新たに対象業務に就く従業者については、開始時期を誤ると、不要な個人情報取得やプライバシー侵害のリスクが生じます。
本記事では、新規採用・配置転換時における犯罪事実確認の「開始時期」と、その根拠・例外について整理します。
犯罪事実確認の開始時期の原則
対象業務に従事することが「確定した段階」から実施可能
新たに対象業務に従事する者について、犯罪事実確認は「従事が確定した段階」から行うことができます。
「確定した段階」の具体例
- 対象業務に従事する旨について、従業者本人から意思表示があった場合
- 内定通知が行われた後の段階
- 配置転換に伴う異動内示が行われ、従事内容が明らかになった段階
この「確定から従事開始までの期間」が、確認実施の適切なタイミングとなります。
なぜ「確定した段階」まで待つ必要があるのか
機微な個人情報の取扱いに関する配慮
犯罪事実に関する情報は、極めて機微性の高い個人情報に該当します。そのため、情報提供は「必要性が明確な場合」に限定されるべきです。
従って、採用または配置がまだ不確実な段階で確認を行うことは認められません。
不確定な段階での実施が不適切となる理由
- まだ従事が決まっていない段階で犯歴情報を取得してしまうと、不要な情報収集に該当する
- 個人の尊厳・プライバシーを侵害するおそれが高まる
- 事業者の情報管理体制に対するリスクも増大する
例外的なケース
募集段階で職種が未確定の場合
採用募集時点で「配属先が複数あり、対象業務に従事するか未確定」というケースも想定されます。
この場合の対応
- 内定通知後であっても、対象業務に従事することが確定した段階で初めて確認を開始できる
- すなわち、「内定=即確認開始」ではないことに注意する
既存従業者に対する確認期限(整理)
| 区分 | 確認期限 |
|---|---|
| 新規採用・異動者 | 対象業務を行わせる前まで |
| 学校設置者等の現職者 | 施行日から3年以内(政令期間内) |
| 認定事業者等の現職者 | 認定日から1年以内(政令期間内) |
緊急時の対応
「いとま特例」との関係性
急な欠員や人員配置の必要性など、やむを得ない事情により、業務開始までに確認が完了できない場合には「いとま特例」が適用されることがあります。
いとま特例の概要
- 原則:従事開始日から3か月以内に確認を行う
- 特定の事情がある場合:最長6か月以内まで延長可能
- ただし、確認完了までの期間中は、当該従事者を「特定性犯罪事実該当者」とみなした防止措置が必要
- 例:児童と一対一の状況を避ける等
まとめ
- 犯罪事実確認は「業務開始前に実施」する必要がありますが、確認手続きの開始は「対象業務への従事が確定した段階」以降に限られます。
- これは、犯歴情報が極めて機微性の高い情報であることから、必要性のない収集を防ぐためのルールです。
- 例外的に確認が間に合わない場合には「いとま特例」を活用することができますが、防止措置を講じる必要がある点に留意が必要です。
事業者にとって重要なのは、採用・異動のプロセスにおいて「いつ、どの時点で確認手続きを着手するか」を明確に位置づけておくことです。
これにより、法令遵守と実務運用の双方において、適正かつ円滑な体制を構築することが可能となります。
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