いとま特例の重要性と適用要件
いとま特例(法第26条第2項)は、やむを得ない事情により従事開始までに犯罪事実確認を行う時間的余裕がない場合、従事開始後3ヶ月または6ヶ月以内に確認を行うことを認める特例措置です。
特例適用期間中、当該従事者は特定性犯罪事実該当者とみなされ、事業者には厳格な**「必要な措置」**の義務が課されます。
一方で、「やむを得ない事情」の判断を誤ると、認定取消しなど監督措置の対象となるリスクがあります。
新規採用・急な欠員における「やむを得ない事情」の境界線
予見可能な欠員に対する計画的採用の懈怠
定年退職など予見可能な欠員に対して採用活動を計画的に行わなかった場合は、特例適用は認められません。
事業者は欠員が予見される場合、事前に犯罪事実確認手続きを織り込んだ採用計画を策定する義務があります。
容認される急な増員・欠員事例
特例が認められる具体例には、新年度の入学者数や利用者数が年度開始直前に想定を上回った場合、事故発生後の緊急配置などがあります。
これらは当初の予見が不可能な事情によるものであることが要件です。
採用活動の長期的な難航と特例適用
欠員が予見され、採用活動を継続したものの従事予定日直前や予定日を過ぎて採用できた場合、特例適用が認められます。
ただし、犯罪事実確認完了までの間、児童と接しない業務に従事させることで事業運営に著しい支障が生じない場合は、特例は認められません。
組織再編・許認可遅延における特例適用の条件
吸収合併等により承継した多数の現職者確認
新設合併や吸収合併により多数の従事者を承継した場合、短期間で確認を行う必要があるときに特例が適用されます。
しかし、契約締結日から効力発生日まで十分な期間があるにも関わらず確認を怠った場合は特例適用は認められません。事業者は計画的な確認実施義務を負います。
許認可遅延による従事開始の遅れ
学校設置者等では、許認可等の遅延により事業運営開始までの期間が十分に確保できない場合に限り特例が認められます。
具体的には、認可権者からの認可が従事開始までに標準処理期間の最長期間(日本国籍1ヶ月、外国籍2ヶ月)を確保できない時期であった場合です。
外部要因による確認遅延と事業者の責務
国側の犯罪事実確認書交付遅延
職員の従事開始までに十分な余裕をもって交付申請したにも関わらず、従事開始までに交付されない場合は特例が適用されます。
「十分な余裕」とは、犯罪事実確認の標準処理期間最長期限(日本国籍1ヶ月、外国籍2ヶ月)を超過しても交付されなかった場合を指します。
従事者による戸籍提出遅延
従事者が戸籍情報の提出を行わず申請が遅れた場合、特例は認められません。事業者は、採用や異動時に戸籍提出の重要性やスケジュールを事前通知する義務があります。
派遣労働者の通知遅延
派遣元事業主の都合による通知遅延など、派遣先事業者が関与できない外部事情による遅延は特例が認められます。
派遣先は、契約に「犯罪事実確認を行う者を従事させる」旨を規定し、予防的措置を講じることが推奨されます。
「いとま特例」適用中の従事者に課される「必要な措置」
なぜ特定性犯罪事実該当者とみなすのか
いとま特例適用中の従事者は犯罪事実確認が未了のため、予防原則に基づき特定性犯罪事実該当者とみなされます。
事業者は、確認完了まで法第6条の防止措置に類する「必要な措置」を講じる義務を負います。
必須となる基本措置と「1対1原則禁止」の徹底
- 従事者を児童等と一対一にさせない措置を講じる
- いとま特例の趣旨、必要な措置、児童対象性暴力防止研修を受講させる
- 研修は違反時の処分対象を理解させる目的で行う
労働時間中の具体的運用策
- 研修等を優先的に充て、児童業務から分離
- 一人になりやすいシフトを避ける運用管理を徹底
組織的な監視体制の設計と運用
- 管理職による定期的な巡回・声掛けの義務化
- 巡回は当該従事者と児童等の状況を継続的に把握する目的で実施
- 乳幼児・障害児等、発達段階で異変を認識できない場合も「一対一」として対応
例外的に1対1が認められる場合
専門的見地からの判断
- スクールカウンセラー等との心理面談で必要な場合
- 家庭や心身状況に応じた相談対応
- 過疎地や特別支援学級で児童等が一人しかいない場合
突発的な事件・事故への対応
- 緊急時の児童誘導・ケア
- おむつ替え、排泄介助、着替え補助、体調不良のケア
- 事業者は常時対応可能な体制を確保することが前提(職員同士の声掛け等)
1対1実施の厳格な運用設計
計画的な事前報告義務
- やむを得ず一対一になる場合、時間・場所・対象児童・必要性等を管理職に説明し了解を得るのが望ましい。
- 突発的でない場合は可能な範囲で記録に残すことが望ましい。
緊急時の事後報告
- 即時に管理職の了解が得られない場合は、周囲の職員に説明し合意
- 周囲職員すら不在の場合は、速やかに管理職に完了報告すること
物理的環境と管理職検証
- 外部から視認性の高い場所や防犯カメラが設置された個室での実施を検討
- 管理職は報告内容の不自然さを随時確認し、連続対応や違和感がある場合は児童等や保護者にも確認する
まとめ
いとま特例は、事業運営の著しい支障を回避するための最終手段であり、単なる採用不備の補填ではありません。
特例適用を回避するためには、採用や配置転換の通知時点から犯罪事実確認を計画的に実施し、対象業務従事までに完了させることが不可欠です。
また、特例適用中の従事者に対しては、1対1回避、組織的監視、緊急時対応など必要な措置を厳格に運用することが求められます。
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