認定対象事業者向け:日本版DBS(こども性暴力防止法)対応の準備と実務ポイント

児童福祉法に基づく事業を行う民間教育保育等事業者は、2026年施行予定の日本版DBS(こども性暴力防止法)の認定申請を行う場合、次のような対応を求められます。本記事では、認定対象事業者が行うべき準備や日常的な義務を、時系列と分野ごとに整理してご説明します。


認定取得前の準備(体制の構築)

認定対象事業者は、内閣総理大臣の認定を受けて初めて、学校設置者等と同等の安全確保措置を実施できる体制が整ったものと認められます。認定取得前には、組織体制や規程の策定など、次の準備が必要です。

組織体制の確保

  • 責任者の設置
    犯罪事実確認記録等の適正管理を行う責任者を含め、2人以上の従事者を配置することが内閣府令で予定されています。
  • 規程の策定
    認定基準に基づき、以下の規程を作成し、内閣府令で定める基準に適合させる必要があります。
    • 児童対象性暴力等対処規程:防止措置、調査、被害児童等の保護・支援に関する事項を定めます。
    • 情報管理規程:犯罪事実確認記録等を適正に管理するための組織的、人的、物理的、技術的な措置を定めます。

認定申請の手続き

  • 手数料の納付
    認定申請時には、政令で定める額(現時点の目安は3万円程度)の手数料を納付する必要があります。ただし、国・地方公共団体単独、または国・地方公共団体と共同で申請する場合は対象外です。
  • 標準処理期間
    認定申請から通知までの標準的な期間は、1か月から2か月程度とされています。

認定後の安全確保措置(日常的な義務)

認定事業者は、犯罪事実確認、早期把握・相談、調査・保護・支援、研修の4つの柱からなる安全確保措置を日常的に実施する義務を負います。

犯罪事実確認

  • 新規採用者は業務開始前に、認定時現職者は認定日から1年以内に、全従事者を対象に確認を実施します。
  • 5年ごとに再確認が必要です。
  • 確認が間に合わない場合は**「いとま特例」**を適用し、当該従事者を特定性犯罪事実該当者とみなし、原則として児童等と一対一にさせない措置を講じます。

早期把握・相談

  • 日常観察や発達段階に応じた面談・アンケートで、児童等の不適切行為の疑いを早期に把握します。
  • 複数の外部相談窓口を含めた相談体制を児童等に分かりやすく周知します。
  • 研修や匿名通報窓口の活用により、報告者が不利益な取扱いを受けないよう配慮します。

調査・保護・支援

  • 性暴力等の疑いがある場合は、公正かつ中立に調査を速やかに実施します。
  • 調査では児童等の人権や特性に配慮し、弁護士や心理士等の専門家と連携することが望ましいです。
  • 被害が認められた場合は、加害者との接触回避や支援機関の紹介など、中長期的な保護・支援を行います。

研修

  • 従事者全員に、児童対象性暴力等の防止に関する研修を定期的に実施します。
  • 研修は座学だけでなく、実践的な対応力を養う演習(ワークショップ)も含み、労働時間に含めます。

情報管理措置と監督への対応

認定事業者は、犯罪事実確認記録等(犯歴情報)を厳格に管理し、必要に応じて監督当局に報告する義務があります。

犯罪事実確認記録等の管理と廃棄

  • 目的外利用の禁止:犯罪事実確認記録等は、防止措置実施以外の目的で使用したり、第三者に提供したりすることは原則禁止です。
  • 廃棄義務:法定の期限(確認日から5年後の年度末から30日以内、または離職日から30日以内)までに、復元不可能な手段で廃棄・消去します。
  • システム管理:情報漏洩リスクを低減するため、原則としてシステム上で閲覧し、紙媒体での保存は極力避けます。

漏えい時の報告義務

  • 犯罪事実確認書の情報漏えいなど重大事態が発生した場合は、3~5日以内を目安に内閣総理大臣(こども家庭庁)に速報します。

国への定期報告

  • 認定事業者は、犯罪事実確認、安全確保措置、情報管理措置の実施状況を年1回、認定日から1年が経過する日の前日を初回期限として国に報告します。

認定マークの活用と責任の連鎖

  • 認定を受けた事業者は「認定マーク」を使用し、安全確保措置の実施を保護者に示すことができます。
  • 共同認定を受けた場合、一方の事業者の不適切行為により認定が取り消されると、両者に欠格要件が及び、2年間は他事業での認定取得が制限される可能性があります。

労働法制上の留意点

特定性犯罪事実該当者や確認拒否者への対応は、労働法制上慎重に行う必要があります。

  • 犯歴判明時の対応:当該従事者を対象業務に従事させない措置を原則とし、現職者は配置転換や業務範囲限定を優先。やむを得ず普通解雇を検討します。
  • 採用時の準備:募集要項や内定時誓約書で、特定性犯罪前科がないことを明示的に確認します。
  • 確認拒否への対応:従事者が正当な理由なく犯罪事実確認を拒否した場合、業務命令違反として懲戒処分対象となり得る旨を就業規則等に定めておくことが推奨されます。

このように、認定対象事業者は認定取得前の体制整備から日常的な安全確保措置、情報管理、労働法制上の留意点まで、多岐にわたる準備と対応が求められます。専門性を維持しつつ、法令に沿った適切な運用を行うことが重要です。

行政書士事務所 POLAIRE(ポレール)

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