こども性暴力防止法(以下「法」)では、児童等に対して教育・保育等の役務を提供する学校設置者や認定事業者に、対象業務従事者(教員等・教育保育従事者)の犯罪事実確認(以下「確認」)を義務付けています。しかし、急な欠員ややむを得ない事情がある場合、確認を行うまでの期限を猶予できる「いとま特例」が設けられています。
いとま特例の概要
「いとま特例」とは、対象業務従事者を業務に従事させるまでの確認を行う期限を猶予する制度です。急な欠員や事業運営上の支障など、特定の要件を満たす場合に適用されます。
1. 適用要件
学校設置者等(法第4条第2項)や認定事業者等(法第26条第2項)は、以下の条件をすべて満たす場合に適用可能です。
- やむを得ない事情があること
内閣府令で定める事情により、対象業務従事者を直ちに従事させる必要がある場合。 - 事業運営に著しい支障が生じること
当該従事者を直ちに業務に従事させなければ、事業運営に著しい支障が生じる場合。
2. 「やむを得ない事情」の具体例
| 分類 | 具体例 | 備考 |
| 新規採用 | 学級数の変動等による急な増員や予見不可能な欠員に対応し、短期間で業務に従事させる場合 | 急な採用 |
| 異動 | 人事交流等により再確認が必要で、従事開始直前に内示される場合 | 予算上の制約など |
| 組織変更等 | 合併・事業譲渡等で短期間に多数の確認対象者が発生する場合 | 新設・吸収合併など |
| 交付遅延 | 確認書の交付申請を十分な余裕で行ったにもかかわらず、国からの交付が遅れる場合 | 国の交付遅延 |
3. 犯罪事実確認の期限
いとま特例を適用した場合の確認期限は、従事開始日から原則3か月以内です。ただし、以下の事情がある場合は最大6か月まで延長可能です。
- 組織変更等の事情がある場合
- 国からの交付が遅延した場合
- 原則の3か月以内に交付申請を行ったにもかかわらず、国から交付されない場合
4. 特例適用中に講じる措置
いとま特例の適用中、対象事業者は犯罪事実確認が完了するまで、当該従事者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければなりません。
ア. 前提対応
- 可能な限り速やかに確認を行う
- 特例対象であること、措置内容、違反時の処分対象となることを従事者に周知する
イ. 措置の具体的内容
- 基本対応
- 児童等と一対一にさせない(研修や複数人でのシフトを優先)
- 特例趣旨や必要措置、児童対象性暴力防止に関する研修を受講させる
- 管理職による定期巡回・声掛けを実施
- やむを得ず一対一になる場合
- 事前に管理職に時間・場所・対象児童・必要性を通知し、事後報告
- 突発的な事故・事件への対応は例外
- 可能であれば視認性の高い場所(防犯カメラ設置の個室等)やリモートで対応
- 面談室で一対一対応する場合は、児童や保護者の同意を得た上で必要に応じて録音・録画
まとめ
「いとま特例」は、急な欠員や事業運営上のやむを得ない事情に対応するための制度であり、適用要件を満たす場合のみ利用可能です。特例適用中も児童の安全確保を最優先に、必要な措置を講じることが求められます。行政書士としても、事業者に対して適切な運用と記録管理の助言が重要です。
✅ ポイント
- 急な欠員時に犯罪事実確認期限を猶予できる
- 原則3か月、例外6か月まで延長可能
- 特例中も児童の安全確保措置を徹底
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