防止措置義務の根拠
こども性暴力防止法では、学校設置者や認定事業者に対して、児童対象性暴力等が行われる「おそれがあると認めるとき」には、その従事者を対象業務に従事させないこと、その他必要な防止措置を講じることが義務付けられています(法第6条、法第20条第1項第4号イ)。
労働法制との調整原則
防止措置として雇用管理上の措置を講じる場合であっても、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が不可欠です。これらを欠いた措置は、権利濫用として無効となる可能性があります。
「おそれがある」場合の具体的対応と労働法上の留意点
- 犯罪事実確認で特定性犯罪に該当する場合
採用段階では「重要な経歴の詐称」として内定取消しが可能です。現職者の場合は直ちに解雇は困難で、まず配置転換が検討されます。 - 被害申出があり調査前の段階
一時的に自宅待機や接触回避を命じることができますが、あくまで暫定的対応に限られ、懲戒や確定的な配置転換はできません。 - 調査で性暴力事実が合理的に認められる場合
懲戒処分や配置転換が可能となります。この場合は就業規則への明記が必須であり、懲戒解雇の有効性は行為内容や職務特性に応じて個別に判断されます。 - 調査で軽微な不適切行為が認められる場合
指導や研修受講命令が適切です。研修を拒否するなど業務命令違反が繰り返される場合は、厳格な対応も可能となります。
雇用管理上の事前準備
採用時には募集要項に「特定性犯罪歴がないこと」を明示し、内定取消事由として「重要な経歴の詐称」を規定しておく必要があります。誓約書や履歴書で犯罪歴の有無を確認しておくことも重要です。
就業規則では、懲戒事由に「児童対象性暴力等」や関連する不適切行為を追加し、本法の趣旨に反する行為は厳格に処分対象とする旨を明示しておくべきです。これらは従事者に事前に周知・説明して理解を促すことが求められます。
また、戸籍等の提出義務を就業規則に定め、提出を拒否した場合には業務命令違反として懲戒対象となることを明記するなど、協力体制を整備する必要があります。さらに、配置転換を検討する場合は、勤務地や職種を限定する合意があるときには本人の同意が必要となる点に留意が必要です。
派遣労働者・請負労働者への対応
派遣先が直接「犯罪事実確認」や「研修依頼」を行う場合、指揮命令権逸脱や偽装請負とならないように注意しなければなりません。そのため、契約書に「犯罪事実確認や研修を済ませた者を派遣する」と規定することが適切です。
防止措置の実施については、派遣先は契約範囲内で業務変更や環境整備を行い、必要に応じて派遣元へ「法第6条に基づく措置が必要」と伝えることが求められます。ただし、犯歴そのものの情報共有は認められません。
派遣元については、契約終了のみを理由とした解雇は認められず、他派遣先への配置、非接触業務への転換、休業措置などを検討することが必要です。
労働時間管理と記録管理
研修時間は労働時間に含まれる点に注意が必要です。
また、犯罪事実確認記録は離職後30日以内に廃棄する義務があり、「離職」には契約継続予定や繰返し短期雇用がある場合は含まれないと解釈されます。
労働法制上の重要な留意事項(まとめ)
- 懲戒処分・解雇の有効性
懲戒解雇や普通解雇の有効性は、行為の性質や業務内容を踏まえて、客観的合理性・社会的相当性があるかどうかで判断されます。 - 事前準備の必要性
内定取消事由や懲戒事由として、「重要な経歴の詐称」や「児童対象性暴力等に該当する行為」を明記し、従事者に周知・説明しておくことが不可欠です。 - 配置転換の実施要件
雇用契約で勤務地や職種を限定する合意がある場合には、配置転換に本人の同意が必要となります
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