日本版DBS(こども性暴力防止法)とは?行政書士が解説する制度概要と事業者の準備ポイント

近年、教育現場での性犯罪事件が社会問題となる中、子どもの安全を守るための新たな制度「日本版DBS(こども性暴力防止法)」の導入が決定されました。

この制度は2026年12月25日の本格施行を予定しており、教育・保育関連事業者の皆様にとって、今から準備を始める必要がある重要な制度です。

今回は、行政書士の立場から、日本版DBSの制度概要と事業者が取り組むべき実務対応について、わかりやすく解説いたします。

日本版DBSとは?導入スケジュールのポイント

  • 2026年12月25日の本格施行に向けた早期準備が必要
    日本版DBSは2026年12月25日に本格施行される予定です。新規採用時だけでなく、現職者にも確認義務が発生するため、認定事業者は施行後1年以内、その他の事業者は3年以内に対応を完了する必要があります。
  • 制度対応には多面的な準備が不可欠
    GビズIDの取得、就業規則の改定、誓約書の整備、職員説明会の実施など、システム面・規程面・運用面での包括的な準備が求められます。
  • 制度導入と併せた多層的な安全対策が重要
    日本版DBSだけでは全ての問題を防げないため、教職員研修、相談環境づくり、啓発活動など、総合的な安全対策の実施が必要です

日本版DBSとは何か?

日本版DBS(Disclosure and Barring Service)は、学校や保育所、認定民間教育事業者等で子どもと接する職に就く者について、性犯罪歴の有無を確認する制度です。

イギリスで先行導入されている同様の制度を参考に、日本の実情に合わせて制度設計されました。

制度の主な特徴

  • 確認対象:子どもと接する職に就く者
  • 確認内容:性犯罪歴の有無
  • 確認方法:国の機関による照会システム
  • 確認頻度:採用時と5年ごとの定期確認

導入スケジュールと対応期限

本格施行:2026年12月25日予定

制度導入後は、新規採用時だけでなく、現職者にも確認義務が発生します。

現職者への対応期限

  • 認定事業者:施行後1年以内
  • その他の事業者:3年以内

定期確認

  • 5年ごとの定期確認が義務化

確認対象となる性犯罪の範囲

対象犯罪の例

  • 不同意わいせつ罪
  • 不同意性交等罪
  • 児童買春
  • 児童ポルノ所持、提供等
  • 児童買春等目的人身売買等
  • 性的姿態等撮影(盗撮)
  • 痴漢
  • その他、各都道府県の条例で定められる性犯罪(例:盗撮など)
    ※一方で、現時点では下着の窃盗ストーカー行為などは特定性犯罪の対象には含まれていません。また、逮捕されても不起訴処分となった性犯罪は照会対象外となります。

確認対象期間

  • 拘禁刑:20年間
  • 罰金刑:10年間

制度の効果と限界

この制度により、一定の性犯罪歴がある者は、子どもと接する職から実質的に排除されることになります。再犯防止の観点から見れば、これは大きな前進といえるでしょう。

一方で、初犯者や不起訴となったケースは対象外であり、制度だけですべての問題を防ぐことはできません。そのため、子どもを見守る体制や相談窓口の整備・拡充によって、問題が起きにくい環境をつくることが不可欠です。

今後の検討課題

準備委員会等の資料によれば、今後は以下の拡大が検討されています

  • 下着窃盗やストーカー行為等の確認対象範囲の拡大
  • 確認期間の延長
  • 不起訴や懲戒解雇の場合も対象とする検討

事業者が今から準備すべき実務対応

1. システム面の準備

  • GビズIDの取得
    制度利用のために必須となるGビズIDの取得手続きを早めに進めましょう。
  • 対象職種の洗い出し
    自社・自組織において、どの職種が確認対象となるかを明確にしておく必要があります。対象となる職種は、事業の実態によって異なるため、法令に基づいた判断が必要です。まずは、弁護士や行政書士などの専門家にご相談ください

2. 規程・書類の整備

  • 就業規則の改定
    性犯罪歴確認に関する規定を就業規則に盛り込む必要があります。
  • 誓約書の準備
    従業員からの同意取得のための誓約書を整備しましょう。
  • 本人確認・同意取得の仕組み
    確認を行う際の本人確認方法と同意取得のプロセスを明確化します。

    労働や雇用に関する他の法令と、日本版DBS(こども性暴力防止法)との整合性を取る必要があるため、具体的な対応は弁護士・社会保険労務士などの専門家にお尋ねください。 

3. 運用体制の構築

  • 職員説明会の実施
    制度の趣旨と手続きについて、職員への説明を行います。
  • 書類管理体制の構築
    確認結果や関連書類の適切な管理体制を整備します。
  • プライバシー保護対策
    個人情報保護の観点から、適切な取扱いルールを策定します。

多層的な安全対策の重要性

日本版DBS(こども性暴力防止法)における犯罪事実確認は重要な手続きですが、これだけで子どもの安全が完全に守られるわけではありません。事業者の皆様には、制度導入と併せて以下の取り組みも進めていただく必要があります。

  • 教職員への研修強化
  • 子どもが相談しやすい環境づくり
  • 啓発活動の継続実施
  • 組織内のコンプライアンス体制強化

専門家との連携の重要性

日本版DBS(こども性暴力防止法)への対応は、労務管理や法務の専門知識を要する複雑な作業です。適切な対応のためには、以下の専門家との連携をお勧めします。

  • 弁護士:法的リスク対応、コンプライアンス体制構築
  • 社会保険労務士:就業規則改定、労務管理体制整備
  • 行政書士:許認可手続き、書類作成支援

まとめ

日本版DBS(こども性暴力防止法)の本格施行まで、まだ時間があるように感じられますが、法律の施行開始時には既に対応が完了していなくてはなりません

事業者・教職員が共に制度の趣旨を理解し、慌てず確実に体制を整えることが不可欠であり、何より大切なことは子どもたちの安全な環境づくりです。

制度対応でご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

※この記事は2025年7月時点の情報に基づいています。制度の詳細は今後変更される可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。

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熊本では、労務関連の整備については 荻生労務研究所様、申請手続きなどの法的サポートは 行政書士事務所POLAIRE(ポレール) が、それぞれの専門性を活かして事業者様の支援を行います。両者で連携し、制度対応を総合的にサポートすることが可能です。

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