「兄弟仲良く」だけで大丈夫?
- 親から「自分がいなくなった後は、好きにして良いから兄弟で仲良く財産は分けなさい」と言われて、遺言書を書くのも消極的で困っています。
- 「自分の目の黒いうちは触らせない」と言って、何もしてくれません。 兄弟は遠くにいて親の面倒を見ているのは自分だけ。 親の生活費や医療費は自分が負担しているのに、このままでは法的には何もしない兄弟と同じ扱いになってしまうの?
もしかしたら、こんな不満を見聞きしたことはありませんか?
自分が死んだら兄弟で好きに財産を分けていいから。自分の目の黒いうちは縁起でもない話はするな。そう親から言われたというのは、多くの家庭でよくある話です。けれど、その「好きに分けていい」は本当にそうできるのでしょうか? 兄弟間では納得いく話でも、その配偶者が権利を主張するといった話も、しばしば耳にします。
また、特に多く見てきたのが「親の介護を担ってきた相続人が報われない」というケースです。 今回は、そうした方が取るべき具体的な対策の例を、専門家の視点からお伝えします。
口頭の「仲よく3等分」には法的効力はない
親が生前に「兄弟で仲よく分けなさい」と言っていたとしても、それが書面に残っていなければ、法律的な効力はありません。相続が発生した場合、一般的には法定相続分(兄弟姉妹で1/3ずつ)が基本となり、それをどう分けるかは、遺産分割協議で決まります。もちろん、兄弟間で「どの財産を誰がもらう」と納得いく分け方が出来るのであれば、法定相続分に拘らずに遺産分割も可能です。
ただし、第三者に対する対抗要件を備えなければ思いもよらぬトラブルの可能性も否めません。
そして冒頭でも述べているように本来は相続の権利を主張出来ない(相続人の兄弟たちの)配偶者が、声高に権利を主張したり、あるいは
親の介護や生活支援に貢献したことが十分に考慮されないまま「平等に分ける」ことになり、介護した人が不満を抱く原因になります。
■ 「寄与分」として主張するには記録が必要
「寄与分」として主張するには記録が必要
相続人が親の財産維持や増加に特別な貢献をしていた場合、「寄与分」を主張することで相続分を増やすことが可能です(民法904条の2)。
ただし、寄与分を主張するには、その貢献の内容を証拠として示さなければなりません。
- 通院の付き添い(日付、場所、時間など)
- 日々の介護(日誌やメモ)
- 経済的支援(立替金の領収書、銀行の振込履歴)
- 家事や生活援助の実績(簡単なメモやLINEのやり取りなど)
これらの記録は、家計簿やスマホのメモ機能を活用するだけでも十分ですが、他の相続人が納得しない場合は、調停や裁判にもつれ込むケースもあるようです。ここでは、あくまでも一般的なことを述べています。 もし、現にご自身がこういった立場におられる場合は、直接専門家にお尋ねください。
「特別寄与料」は使えないケースが多い
もうひとつ、2019年の民法改正では「特別寄与料」が新設されました。これは、相続人ではない親族(同居長男の嫁など)が被相続人に貢献した場合に、金銭請求ができる制度です。
しかし、被相続人の介護にあたり、相応の報酬を受け取っていると、この制度は使えないので注意が必要です。
そもそも実子である相続人はこの制度の対象外です。
そのため、介護をしてきた子どもが報われるには、「寄与分」の主張か、遺言による対応しか方法がありません。
一番確実なのは「遺言書」を残してもらうこと
親の認知機能が衰えないうちに、「面倒を見てくれる長女に多めに相続させる」といった内容を遺言書を作成することが、最もスムーズで確実な方法です。
弁護士・司法書士・行政書士といった法律系の専門家であれば
- 自筆証書遺言の作成サポート
- 公正証書遺言の手続き支援
- 相続財産の整理
- 遺言文案の作成 などを通じて、親の想いを法的に形にするお手伝いができます。
最近はネットでも沢山情報を得ることが出来ますが、その方にとっての最適解を出せるのは専門家です。文字情報では類似事例を見つけることが出来ても、それが100%当てはまるとは限りません。
将来の不満を防ぐポイント
- 親の「兄弟で仲よく分けて」は、現実には公平にならないことが多い
- 介護・支援をしてきた事実は「寄与分」として記録を残す
- 相続人は「特別寄与料」の請求はできない
- トラブルを防ぐには、親に遺言書を残してもらうのが最善
- 専門家に早めに相談し、法的な準備を整える
私はどうすれば? というお悩みは、ぜひ専門家にお尋ねください。